
Duration
2024.07 - 2024.11
Client
Star Music Entertainment Inc.
My Role
Tags
Overview
所属する株式会社スターミュージック・エンタテインメントの採用強化を目的とした、求職者向け資料の制作プロジェクトです。採構成検討、市場リサーチ、コンテンツ設計、デザイン制作、社員インタビュー、写真撮影まで一貫して担当し、34ページに及ぶ包括的な資料を制作。
結果として、カジュアル面談からの選考エントリー率が2.7%から4.0%へ改善(+48%)し、Wantedlyに公開した社員インタビュー記事からエントリー→内定というケースも発生。さらに、スライドデザインキュレーションサービス「Slideland」でおすすめスライドとして取り上げられるなど、外部からも高い評価を獲得しました。
Context
プロジェクト/プロダクトカテゴリ | ブランディング資料(採用マーケティング) |
|---|---|
ステージ | 新規制作(0→1) |
対象ユーザー/ペルソナ | 採用候補者、求職者、カジュアル面談参加者 |
Problem & Goal
背景と課題
スターミュージックでは、音楽制作、アーティストマネジメント、デジタルマーケティングなど多岐にわたる事業を展開していますが、事業の実態や企業文化を求職者へ紹介するドキュメントが存在せず、採用候補者が企業の魅力を十分に理解できていない、働き方などを具体的にイメージできないなどの問題があり、カジュアル面談からの転換率の低さや内定辞退者の多発などの課題がありました。
採用面での課題
カジュアル面談から選考への移行率がわずか2.7%
内定を出しても辞退されるケースが多発
入社後のミスマッチによる早期離職のリスク
エンターテインメント業界の魅力的な企業が多い中、選ばれる理由が不明確
「なぜスターミュージックで働くのか」というストーリーが欠如
目標
このプロジェクトでは、以下の目標を設定しました。
選考エントリー率の向上:カジュアル面談から選考への転換率を改善
組織文化の可視化:目に見えない企業文化を、ビジュアルとストーリーで表現
候補者の意思決定支援:「この会社で働きたい」と思える判断材料の提供
採用ブランディングの強化:スターミュージックならではの魅力を明確化
Process
1. プロジェクト発案とリサーチ
人事チームとのミーティングで、カジュアル面談からの転換率の低さと内定辞退率の高さが議論され、求職者向けの包括的な資料の必要性があることがわかりました。近年、スタートアップやテック企業を中心に採用ツールとして普及しているCulture Deckの制作を提案し、制作に着手することとなりました。
プロジェクト開始にあたり、国内外20社以上のCulture Deckを徹底的に分析しました。
リサーチで注目した観点
情報の深度:どこまで詳細に組織文化を説明しているか
ビジュアル表現:図解、写真、イラストの使い方
ストーリーテリング:感情に訴えるストーリーの構成
データの活用:定量的なデータと定性的なストーリーのバランス
ページ構成:40ページ前後が最も読まれやすい傾向
特に参考にしたのは、Nstockの「事業の未来の解像度の高さ」と、MoneyForwardの「インフォグラフ」です。これらのプラクティスを参考にしつつ、スターミュージックならではのアプローチを模索しました。
2. 全体構成の検討
候補者が「理解する→共感する→決断する」という心理的なジャーニーを考慮して、以下の構成を構成を検討しました。
会社紹介:基本情報、沿革
ミッション:ミッション、ビジョン、ステートメント
事業紹介:事業の詳細と実績
事業戦略:会社の目指す未来、市場環境、ワクワク感
企業文化:バリュー、カルチャー、メンバーの声、福利厚生
3. 社員インタビューとコンテンツ収集
Culture Deckの説得力を高めるため、社内の多様な役割を持つメンバー5名に対して、1人あたり1時間のインタビューを実施しました。
インタビュー対象
マネージャー層
新卒入社メンバー
中途入社メンバー
クリエイティブ職
ビジネス職
インタビューで聞いたこと
なぜスターミュージックに入社したのか
役割や業務内容や1日の働き方
仕事のやりがいは何か
どんな時に成長を感じるか
組織の良いところ、課題だと思うところ
どんな人と一緒に働きたいか
インタビューを通じて、組織文化の「言語化されていなかった部分」、例えば、「挑戦を歓迎する文化」「裁量の大きさ」「フラットなコミュニケーション」などが、魅力として浮かび上がってきました。また、インタビュー内容は、Culture Deckに組み込むだけでなく、Wantedlyの記事としても公開しました。
4. 写真撮影とビジュアル素材の制作
Culture Deckのビジュアル面での訴求力を高めるため、オリジナルの写真素材を撮影しました。ストックフォトではなく、実際のオフィスや社員の様子を撮影することで、求職者に「ここで働く自分」をイメージさせることを意識しました。

撮影で使用した個人所有のSigma fp。社内イベントの撮影などにも大活躍している。
5. デザイン制作とレイアウトグリッドの設計
デザイン制作では、基本的にタッチポイントがデジタルになることから、デザインシステム「Interstellar」のカラーシステム、デザイントークンを使用し、同時並行で進めていたコーポレートサイトのデザインと一貫性のあるデザインを実現しました。
また、6カラムのグリッドシステムを考案。余白やコンテンツエリア8pxの倍数で統一する工夫により、どのページも統一感のあるレイアウトを実現しています。
デザインの方向性
洗練されたビジュアル:プロフェッショナルでありながら親しみやすい
図解の多用:複雑な情報を視覚的に理解しやすく
余白の活用:情報過多にならないよう、適度な余白を確保
一貫性:全35ページを通じて統一感のあるデザイン
6. レビューとブラッシュアップ
初稿完成後、社内の複数のステークホルダーにレビューを依頼しました。特に現場メンバーからのフィードバックは貴重でした。「これは少し理想化しすぎている」「この表現だと誤解を招くかも」といった現場目線の意見により、リアリティと魅力のバランスを調整することができました。複数回のレビューサイクルを経て、2024年10月に最終版が完成しました。
7. 公開とプロモーション
Culture Deckは、2024年11月にSpeakerDeckで公開しました。同時に、社員にもCulture Deckを共有し、採用候補者を紹介する際に活用してもらうよう促し、以下のチャネルでもプロモーションを実施しました。
採用サイト(Notion):SpeakerDeckの埋め込みを目立つ位置に配置
コーポレートサイト:Aboutページに埋め込みを配置
X(Twitter):公式アカウントで告知
Assets
プロジェクト完了後、以下の成果を達成しました。
選考エントリー率 | 2.7% → 4.0%(+48%向上) |
|---|---|
Wantedlyからの応募増加 | 社員インタビュー記事からエントリー→内定のケースが発生 |
内定承諾率の向上 | Culture Deckを読んだ候補者の内定承諾率が向上傾向 |
外部評価の獲得 | Slidelandでおすすめスライドとして掲載、Xでシェアされ認知拡大 |

Slidelandにておすすめスライドとして取り上げていただきました。
Assets
Culture Deck デザイン(35ページ) / 社員インタビュー記事(Wantedly × 4本) / オリジナル写真素材(50枚以上)
Tools/Technology
設計/制作 | Figma |
|---|---|
公開プラットフォーム | SpeakerDeck |
インタビュー文字起こzし | Wisper |
写真撮影 | 一眼レフカメラ(Sigma fp)、Lightroom Classic |
Reflection
採用マーケティングとブランディングの統合
Culture Deckは単なる採用資料ではなく、ブランディング資料でもありました。コーポレートサイトと同じデザイン言語を使うことで、ブランド体験の一貫性を保ちながら、採用候補者に「スターミュージックらしさ」を強く意識付けることができたと思います。
コーポレートサイト→Culture Deck→Wantedly→応募という一連の流れで、すべてのタッチポイントで一貫したビジュアルとメッセージを提供することがブランド訴求をより強力にすると実感しました。
図解デザインのスキル向上
Culture Deck制作を通じて、図解デザインのスキルが飛躍的に向上しました。35ページにわたる資料の中で、様々な種類の情報を視覚的に表現する必要があり、そのために多くのリファレンスを探し、試行錯誤を重ねました。
また、レイアウトグリッドの設定方法についても、一つの解を見つけることができました。6カラムのグリッドシステムは、その後の資料作成やプレゼンテーション制作でも活用しており、デザインプロセスの効率化に大きく貢献しています。
今後の課題と展望
組織は常に変化するため、Culture Deckも定期的にアップデートしていく必要があります。現在は半期に1回の更新サイクルを検討していますが、コンテンツ更新の仕組み化が今後の課題です。
新しいメンバーが入社したらインタビューを追加する、新しい制度ができたら反映する、といった継続的な改善サイクルを回すために、更新プロセスのドキュメント化などを行いたいと思います。

